お勧め作品「友だちのうちはどこ?」

お勧め作品「友だちのうちはどこ?」

アッバス・キアロスタミの出世作と言えるのがこの映画「友だちのうちはどこ?」です。1987年に製作・公開されました。キアロスタミ作品の特徴である、子供、素人俳優、ロングショットなど全ての要素が詰め込まれています。友達のノートを間違えて持って帰ってしまった少年が、その友達の家を捜し歩くというとてもシンプルな物語なのですが、その過程で出会うイランの人々や実際にそこで生活する人々の息吹が聞こえてくるようなとても可愛らしい映画です。

映画「友だちのうちはどこ?」について

この映画の舞台は、カスピ海近辺にあるコケールとポシュテという隣り合った2つの村です。職業俳優を一切使わず、地元の人達を俳優として撮影しました。本作に始まるコケールを舞台にした三部作「そして人生はつづく」、「オリーブの林をぬけて」は“デコボコ道3部作”と呼ばれています。本作で主演した職業俳優ではない子役ババク・アハマッドプールは、「オリーブの林をぬけて」にも出演しています。本作はイランの首都テヘランで開催されたファジル国際映画祭に出品され、最優秀監督賞と審査員特別賞を受賞しました。また、1989年のロカルノ国際映画祭では、銅豹賞、FIPRESCI賞特別賞、エキュメリック審査員賞特別賞を受賞しました。日本では1993年に公開され、同年度のキネマ旬報ベストテンで第8位に選ばれています。2005年には、英国映画協会が選んだ「14歳までに見ておきたい50の映画」の5位にランクインしました。

ストーリー

イラン北部の小さな村・コケール。その小学校のあるクラスでは、モハマッド・レダ・ネマツァデが先生に酷く叱られていました。宿題をノートではない紙に書いてきたからです。「今度同じことをやったら退学だ」と先生はモハマッドに告げます。モハマッドの隣の席に座るアハマッドは、学校が終わって家に帰り、宿題をやろうとしてビックリします。なんとモハマッドのノートを持って帰ってきてしまっていたのです。モハマッドが学校で転んだのを介抱したとき、自分のものと似た彼のノートまで鞄に入れてしまったのでした。宿題をこのノートに書かなければモハマッドは退学になってしまいます。困ったアハマッドは隣の村に住むモハマッドの家までノートを届けることにしました。しかし、家を出ようとすると母さんに「宿題をやってからじゃないと遊びに行ってはいけないよ」と言われてしまいます。さらに宿題が終わったらパンを買いに行ってほしいと言うのです。アハマッドはこのノートがないとモハマッドが退学になってしまうと必死で説明しますが、母さんは耳を貸しません。諦めて宿題をやろうにも、彼のことが気になって手に付かないのです。アハマッドは、母さんの目を盗んでこっそり家を抜け出し、モハマッドの住む隣村・ポシュテへと走ります。山を越え、谷を越えてやっとのことでポシュテに到着しますが。モハマッドの家がどこにあるのか分かりません。アハマッドは色々な人に道を聞き、やっとのことでモハマッドのいとこが住む家に着きます。しかしモハマッドは入れ違いに父親とコケール村へと出かけたというのです。慌ててきた道を戻るアハマッド。コケール村に着くと、今度は自分のおじいちゃんに捕まり、家から煙草を持ってくるようにと言われてしまいます。家中探しても煙草は見つからず、アハマッドは諦めておじいさんの元へと戻ります。するとその場にいた男が紙をくれといってモハマッドのノートを勝手に1枚破りとってしまいました。男はネマツァデと口にしたので、「モハマッド・レザのお父さんですか」と聞きますが、男はそれを無視してロバに乗ってポシュテの方へと行ってしまいます。アハマッドは男を追いかけて再び走りますが、男の家にいたのはモハマッドではありませんでした。しかし疲れ果てたアハマッドにその子が物知りの老人を紹介してくれました。辺りはすっかり暗くなっていましたが、物知りの老人はモハマッドの家に連れて行ってくれるといいます。暗い道を老人と2人で歩き着いた家は、しかしモハマッドの家ではありませんでした。アハマッドは家に帰ると夕ご飯も食べる気になれず、仕方なく二人分の宿題を始めます。翌朝の小学校。モハマッドはノートが見つからず、また先生に怒られることを考えて泣きそうな顔をしています。アハマッドはまだ来ていません。先生が来てみんなの宿題をチェックして周っている時、ようやくアハマッドが到着しました。彼はモハマッドにノートを渡し、「宿題はやってあるから大丈夫」と話します。先生はモハマッドのノートを手に取り、「よくできました」とほめるのでした。

キャスト

  • アハマッド・・・ババク・アハマッドプール
  • モハマッド・レダ・ネマツァデ・・・アハマッド・アハマッドプール
  • 先生・・・ホダバフシュ・デファイ
  • 母さん・・・イラン・オリタ
  • おじいちゃん・・・ラフィア・ディファイ

スタッフ

  • 監督・脚本・編集・・・アッバス・キアロスタミ
  • 製作・・・アリ・レザ・ザリン
  • 撮影・・・ファルハッド・サバ
  • 音楽・・・アミン・アラ・ハッサン

感想

間違えて持って帰ってきた友達のノートを、隣村まで届けに行くというたったそれだけのとてもシンプルなストーリーなのですが、子供たちの演技が素晴らしく、自分の子供時代を思い出してハラハラドキドキしながら観ました。お金をかけてCGやVFXを多用した超大作アクションもいいですが、こんな風にだれもが一度は体験したことのある子供時代のあ大冒険を描くのも素敵だなと思いました。子供の頃って先生や親は絶対的な存在で、彼らの言いつけを守らなければどんな怖いことが起こるか分からないという風に考えるのが普通だったと思います。高学年になったりすると、大人たちに内緒で自転車でちょっと遠くに行ってみたり、立ち入り禁止の場所に入ったりしました。あの時の、見つかったらどうしようというドキドキと、ここには何があるんだろうというワクワクをこの映画は思い出させてくれました。大人にとってはノートの1冊くらいどうということはないのですが、子供にとってはそれは死活問題で、今すぐ届けなければという焦りと使命感はなんだか懐かしさを感じました。いつからあんな風に純粋な心を無くしてしまったのでしょうか。大人から見ればたかがノート1冊。そのノートのためにアハマッドはジグザグ道を何度も走ります。その一生懸命は胸にグッと来るものがありました。一方大人たちは、説明しても聞いてくれないし、道も教えてくれないし、理不尽な命令はされるしで、本当に嫌な感じです。大人には大人の事情があるとはいえ、純粋なアハマッドを見ていると、大人たちには残念な気持ちを抱いてしまいます。結局アハマッドはノートを渡すことができず、二人分の宿題をやることを思いつきます。これはいわば「ズル」ですから、本当は駄目なことなのでしょうが、1人分でも嫌な宿題を2人分やってあげるアハマッドにはやはりやさしさを感じました。それと同時に、純真無垢な子供が如何にして「嘘」や「ごまかし」を覚えていくのかがわかった気がしました。結局そうやって彼らから純粋さを奪っているのは周りの大人なんだなと思います。この映画は「14歳までに見ておきたい50の映画」に選ばれていますが、私はかつて子供だった大人たちにこそ見てほしい映画だと思いました。